DORIとKM-DR
DORIとKM-DR
2008年2月12日
わざわざ、報告という程でもないものを書くのは、気がらくだ、というより気分がいい。
ミクシィの日記も書いたのだが、僕がふだん演奏に使っているギターは、ガット弦のものだ。石川鷹彦さん監修によるもので、弦はクラシックだけれど、ネックの太さ、指盤の広さは、フォークギターに準ずる。厳密に言うと、タカヒコさんが主に使用しているフォーク型ギターと、ネックだけは、その丸みもほとんどおなじだ。そのギターもさわらせてもらったから、間違いない。ごらんのように、胴体はクラシックギターだ。このギター「DORI-003」を、手にした3年前から、ずっと主要ギターとして弾いている。
実はDORIを手に入れてすぐに、ひびが入った。携帯電話が、ギターの裏板めがけて飛び込んだ。僕にはそう見えたが、僕が落としたのだろう。それを修理する機会のないまま、去年の暮れまで使いつづけた。なんせステージ演奏は、このDORI一本にしぼっていたから、修理に出すことができなかったのだ。
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タカヒコさん宅で、これおもしろいだろ?と、彼に手わたされたギターがあった。DORIだった。いや、それがDORIと寸分たがわぬフォークギターだと、さわるまで気がつかなかった。
しばらく貸してもらった。理由は、あからさまに言えば、このフォークギターを借りている間に、DORIについている不要なアナボコを塞いでもらうこと。この作戦はうまくいった。一ヶ月ほどの修理期間中、僕はこのDORI型フォークギターを使って、ステージに立った。指盤が、まるでおなじ状態だから、弦のタッチだけを気にすればよかった。実は、ガット弦とテツ弦を、うまく弾きわけられなかったが、それは、ここのテーマとはちがって、たんなる反省文になるので、割愛。
そして、昨春。タカヒコさんのリサイタルに声をかけてもらった。遠いむかし、六文銭に参加するようになったとき、たった一回、どこかの会場で、タカヒコさんと小室さんのギター伴奏で、「雨が空から降れば」をうたったことがある。
昨春のタカヒコ・コンサートも、「雨が空から降れば」を、彼のギターとコーラスで歌った。このときの気分は、これまた別に報告する価値があるけれど、いつかの機会に。ギター自身が歌いつつ、歌手を空中浮揚させてくれるのを、味わったからだ。
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そして、この会場で、DORIとDORI型フォークギターの制作者でもある、松井邦義さんとご子息に会った。さっそくぼくがDORI型フォークを借りて使ったこと、そのカンジが忘れられないことなど伝えた。彼の返事はひとつ。「作ります、待っててください」「えっ、はい」
一月下旬、取り次ぎ店メディアカームの酒井さんから。ギター完成、のメールがあった。北海道から帰ってすぐ、ぼくは神田にあるその店に向かった。松井さんに作るといってもらってから10ヶ月目。ついにゴタイメン。目の前につや消しのアランフェス・ケースが有った。中から出てきたのは、どうしてもDORIにしか見えないギター。
「2008 KM-DR」通し番号なし。
いい音。僕がフォークギターにもとめていた音色だと思った。ふつうにフォークギターに求められる音色とは、すこし違うのかもしれない。だって、クラシックの音色もまじっているようなんだから。
いや、誤解もある。だれがって、ぼく自身がだ。後日、コムロさんに弾いてもらったら、最上級のほめ言葉だったが、クラシックの音がまざっているとは、言わなかったな。しかし、ずっとDORIの音になじんできたから、DORIの音イコール、クラシックの音なのだ。だから、ぼくの解説には誤解+無理がある。今、気に入っているのは、指弾きでストロークしたときの、やわらかで、バランスのいい音色。
ツイシン 「松井さん、すごいギターです。ありがとう」
(2008/2/12のHP「日々のこと」から転載)
左→DORI003 のヘッド 中央→DORIとKM-DR 右→KM-DR のヘッド