君は誰かな 作詩/糸田ともよ 作曲/及川恒平
君は誰かな 作詩/糸田ともよ 作曲/及川恒平
2010年12月6日月曜日
君は誰かな
この歌をうたうとき、僕は微妙な不安の中にいる。君は誰かな、と問わねばならないというのに、、すでに君はそこにいないのではないか、いや、君はもともと、いないのではないかと。君は誰かな、とは、私は誰か、の言い換えかと、かんぐってもむだなことだと、早晩きづかされるだけだ。
君は誰かな。
そして、その語り口を真に受けて、この問いに、まっすぐに歌い手が反応するわけにもいかないと、おもいいたるだろう。そう、この、君は誰かな、は、どんな答えも欲していないのだと。それまでの習慣にしたがい、思いをこめて訊ねようとしても、耳元で、がわがわと鳴る、もがりぶえのような自分の声を聴くだけだ。聴く人々を説得しようとする歌い手の、欲望をあざ笑う仕掛けに、そうやって、僕もまた身動きがとれなくなるのだ。
きみはだれかな
水でかいた落書きのように、急速に意味は希薄になっていく。意味は喪っていくのだけれど、
濃厚な気配を残したままの言葉が在ると謂う。
「キミハダレカナ」
坂道、街路樹、踏切と、風景は移り変わる。ところが、眼前にいるはずの「君」は、いない。
「キミハダレカナ」
ふと、口をついてでたはなうた。たった一人のリスナーは僕自身。そんなときでさえ、言葉の意味も、問うという行為の意図も、教えてはくれない。僕はあきらめていく。君には、誰かな、なんてもう訊かない。問いつめたりなど、もちろんしない。だから、呆然と音のみをつむいでいる僕をみつけないでほしい。
キ・ミ・ハ・ダ・レ・カ・ナ
この信号がとどくとすれば、ここでも、いまでもない。見知らぬ星の落莫たる平原の小石。
(以上、2010/4/22 HP「歌のはなし」から転載)
A・C#m/Bm・E7 A C#m・Bm/E7・F#m E7
光が 傷口 を 細く 雲に 開 き
Bm・A#-/C#m・F#m E7 D- Dm A ÷
零れて くる 様 に 笑ってる 君は誰 な
A9 ÷ A9 ÷
揺らめく 坂道 君は 誰か な
A・C#m/Bm・E7 A C#m・Bm/E7・F#m E7
優しく 曖昧 な 言葉の 網の目 に
Bm・A#-/C#m・F#m E7 D- Dm A ÷
溜息 絡ませ て 星を摘む 君は誰 か な
A9 ÷ A9 ÷
泡立つ 踏切 君は 誰か な
A・C#m/Bm・E7 A C#m・Bm/E7・F#m E7
闇に 溺れてい く 木の葉を 追う様 に
Bm・A#-/C#m・F#m E7 D- Dm A ÷
不意に 見えなくな り 届かない 君は誰 な
A9 ÷ A9 ÷
ざわめく 街路樹 君は 誰か な