2012年2月12日日曜日
2012年2月12日日曜日
花の季節の歌 作詞曲/及川恒平
花の季節の歌
【2012年記】
まがりなりにも流行歌の作詞家を経験していて感じていたことの一つに、
主人公や歌い手になりきらなければ、この仕事はやっていられないのだというものがあった。
こう今書いているというのは、そう、ぼくはその資質に乏しかったのだ。
悲しい歌を書くとしたら、涙を流しながら書くようでなければ、一流にはなれないらしい。
悲しい歌を聞いて、感動したら人前であろうが泣けるような、濃い情感の持ち主が、
やっぱり聞く人を泣かせることができるのだろう。
この単純な理屈を、ちょっとは納得できるようになってきたが、遅すぎるのもいいところだ。
ぼくがそうできなかった理由の一つは、恥ずかしいというのがある。
これではいけない、プロの作詞家とはほど遠い。
泣かせてなんぼ、楽しませてなんぼという考えが、口にこそ出さなくても根底になくてはならない。
自分が恥ずかしいものだから、よせばいいのに、歌ってくれる人も、
こんなこと歌ったら恥ずかしいだろうなと気を遣ったりもした。
バカだ。歌い手もプロなのだ。泣かせてなんぼ、楽しませてなんぼの人たちだというのに。
最近になって、ちょっとは納得できるようになったというのは、「昭和歌謡」というくくりで、
ライブをするようになって、その頃の流行歌を自分で歌うようになったせいかも知れない。
いや、納得できるようになったから「昭和歌謡」を柱にしてライブできるのかもしれない。
順序はこの場合どちらでも大差はなさそう。けれど、自作自演者のおちいりそうな場所に、
ぼくはちゃんとおちいっていたということはたしかなようだ。
立場を変えれば、おちいりつづけて音楽するのがフォークシンガーの鏡とも言えるかもしれない。
ライブ時と普段の様子と、ほぼ落差がなかったと言えば言える高田渡はその典型だろうし、
それを非難するものは、フォークというものによりつかなかっただろう。
自分のことを言えば、高田渡ほど開き直れずにいたともいえる。
はたしてどちらが正解なのか、今だって結局は解っていない。
長い寄り道をしたが、この「花の季節の歌」に話を進めたい。
この歌は、フォーク的にはそうとう虚構がかったものだろう。
曲的にも、アレンジも当時のポップスを目指したものだといっていい。
この歌が入っているLPアルバム「名前の無い君の部屋」は、国吉良一の編曲によるものだが、
なんといっても、メインの曲が阿久悠の作詞による「東京暮色」というのが特徴的といえるだろう。
流行歌手として、ぼくはあまりにも意欲がなかったので、ヒットの機会をのがしたが、
これをきっかけに、ぼくは阿久さんの関係オフィスに入って、他人のために歌を書き出した。
そして結局、最初に書いたようなプロの壁にぶち当たって、挫折してしまうのだった。
で「花の季節の歌」だけど、実はちゃんと精神的な下地というか、ささえがあるのだ。
それは西岡恭蔵のデビューアルバム「ディランにて」に登場するような女の子たちだ。
たとえばプカプカの主人公だったり、冬遊子だったり。
当時のぼくから見て、恭蔵の書く女の子はなんともまぶしく目にうつったのだった。
まだ関西に半分住んでいた彼が上京するとしょっちゅう会っていたという理由もあり、
「恒平と恭蔵と女」というタイトルで青山タワーホールでライブをした。
このときのゲストの女性が、恭蔵の書く女の子と印象がかさなると思っていた、横山リエさん。
アーリータイムスの演奏も忘れられない。
★
【2001年記】
調子にのって書いてしまおう、と言っても重大なコクハクと言うわけでは全然ないのですが、
この歌に関して説明するのはてれくさいところがあります…。
この歌がどんなふうに聴かれていたのか想像するすべはなかった。
という地味な書き出しでいこう。地味なまま終ったりして…
つまり発表当時あまり反響があったとはいいがたかったのだ。
どうもそのころぼくの代表曲としてあった『面影橋から』と、
あまりにも遠く離れているからかとも思えなくもなかった。
ただぼくは、こういったふうな軽いポップスタッチの歌は実は好きだった、というかずっと好きだ。
どっちかいうと、自分の感性としてはこっちかなとも思っていた。
ただし、USAの方向ばかり向いているアコースティックも好きにはなれなかった。
それに当時の和製フォーク界の音楽レベルが
USAのそれに肩を並べられていたかどうかは?だけどね。
そして、どうしても受け入れられないものとして、当時のニューミュージックサウンドがあった。
しかし考えようによっては、輸入モノだったロックやフォークが
日本の独自性を加味して作り上げられたのがニューミュージックとも言えるのかな。
ついでに言えば、現在のアコースティックギターと称する音は
ほとんどが電気ギターの音にしか、ぼくには聞こえないのだが…
あのむりやり膨らませた低音の響きはゲヒンダナ、ココダケノハナシ…
編曲のニュアンスも、そのころの録音技術のめざましい発達にともなって
厚く濃くなっていったのだったけれど、ぼくとしては、
もっとアコースティクなサウンドを持続していたかったということだ。
当然の結果として、当時ぼくが組んだユニットはジャズやクラシック、邦楽カンケイ者が多い。
結局、冷静に判断すると、ぼくの声質を含む音楽性が、
当時の流れにマッチしなかったというだけのハナシなんだけどね。
突然、今思い出したことを、ひとつ。
そのころぼくがよく一緒にコンサートツアをくんでいた女性ミュージッシャンがある時言いました。
「バックの音なんて何でもいいのよ、邪魔でさえなければ…」
ぼくはキモをつぶしたのデシタ。今回の話題とはまるで無関係だけどここに書かないと忘れそうでネ。
さて歌詞の内容。どんな歌でもそうだけれど、まるっきり自分の外にある題材で書くことはない。
自作自演の者はほぼそうだと断言していいだろう。
ただし、全てほんとうかというと、それも違うと断言してもいい。
この『花の季節の歌』で、虚構と言いきることのできるひとつに、「黙って踊っていよう…」がある。
学生時代、ぼくは役者をすることもあったのだが、
あるとき佐藤信さんの作品である「私のビートルズ」の主役を演じたことがある。
渋谷に当時できたばかりの「ヘア」という名の昼間はブティックであるパフォーマンススタジオだった。
当の佐藤さんも見に来てくれたその公演で、ぼくの演じた主人公だけが踊らずに終った。
もちろん稽古当初は踊ることも演出家は考えていたのだが、あまりのひどさにあきらめたか、
ぼく自身が抵抗したか、大道具として舞台にあった脚立の上でぼくの芝居はほぼすませたのだった。
ではなぜ、そんなウソを混ぜたかというと、あこがれがあったからだろう。
街の見知らぬ少女と踊るなんて、なにかドラマチックだとぼくは他愛もなくアコガレたというわけだ。
ただ、そのころぼくは別れのシーズンを迎えていたとは言える。
花の季節というなんのへんてつもない言葉に実は、
ちょっとしたローカルな意味があることを書きそえておきたい。
北海道、釧路の夏は、実質的に来ない年もあった。
つまり一年中ストーブを消せないこともあったし、真夏でも夜はセーターが必要なのはいう迄もない。
この道東地方の花の季節は六月から八月までの間といっていいだろう。
そして海抜数メートルの場所に高山植物が育っていることも知ってほしい。
こんな土地柄の子供の見る花は、当時は比較のしようもないのでぼくもそんなものと思っていた。
しかし学校が東京になり、上京して暮すようになってから、
ぼくが見ていたのは「花」なんかじゃなかったんだと確信したのだった。
街中に花が咲き乱れるという風景を、初めて「内地」で見からだ。
そう、ソメイヨシノ、つつじ、紫陽花…せっせと定期券で途中下車しては、そんな花を見て回った。
だから「花の季節の歌」を教えてもらうということはデスネ、エー、まあそんなことなんですね、
ナンノコッチャ… 「ヤッパリ地味ナママオワリマシタ。ゴメンネ」
(前奏) D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 ×4
D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 Em/EmΔ7 Em7/Em6 D/DΔ7 D6/DΔ7
花 の 季節の 歌 を 君 は 教えてくれ た
D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 Em/EmΔ7 Em7/Em6 D/DΔ7 D7
僕 が 一人で 暮 す 今日 と いう日の為 に
G Bm7 Em7 A7
一時 しのぎに 見 付けた 幸 せに 酔っ て
G Bm7 DΔ7 Em7 A7 ≒
黙っ て 踊ってい よう 街 の 少女 よ
D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 Em/EmΔ7 Em7/Em6 D/DΔ7 D6/DΔ7
こん な 素敵な 夜 は お伽 話の よう に
(間奏) D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 ×4
D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 Em/EmΔ7 Em7/Em6 D/DΔ7 D6/DΔ7
花 の 季節が 終 り 今 は 夜が好きだ よ
D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 Em/EmΔ7 Em7/Em6 D/DΔ7 D7
散っ て しまった後 の 安 ら ぎに 抱かれ て
G Bm7 Em7 A7
明日 はいつも さよ ならと 背中 合せ だか ら
G Bm7 DΔ7 Em7 A7 ≒
黙っ て 踊ってい よう 街 の 少女 よ
D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 Em/EmΔ7 Em7/Em6 D/DΔ7 D6/DΔ7
こん な 素敵な 夜 は お伽 話の よう に
(前奏) D/DΔ7 D6/DΔ7 D/DΔ7 D6/DΔ7 anytime F.O.